今年ももうすぐインフルエンザ流行の季節がやってきますね。憂鬱です。

友人に妊婦さんがいます。3歳の女の子がいて、二人目の妊娠です。彼女は冬を前にして、インフルエンザの予防接種を受けようかどうか迷っています。

妊婦はインフルエンザの予防接種をしても自分や胎児に影響はないのでしょうか? 予防接種はいつからできるのでしょうか?インフルエンザワクチンには防腐剤が入っていると聞きましたが、問題ないでしょうか? いろいろ調べてみました。

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インフルエンザ 予防接種 妊婦への影響は? 接種しても大丈夫?

★インフルエンザワクチンは不活化ワクチン

ワクチンにはいろいろな種類がありますが、インフルエンザワクチンは生ワクチンではなく、不活化ワクチン(細菌やウイルスをホルマリンや紫外線などで処理をして感染力や毒力(病原性)をなくし、免疫をつけるのに必要な成分を取り出してワクチン化したもの)です。

生ワクチンではないので妊婦に接種しても特に重篤な副作用は起こらないと考えられ、一般的に妊娠中の全ての時期において接種可能であるとされています。
また、妊娠初期に従来のインフルエンザワクチンを接種しても奇形のリスクがないという研究結果もあります。

 
★米国では安全性と有効性が証明

米国ではインフルエンザワクチンに関して長い歴史があり、安全性と有効性が証明されています。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの子供についても有害事象は観察されていません。

 
★妊娠全期間を通じて接種可能

産婦人科診療ガイドラインー産科編2014では、

「インフルエンザワクチン接種の母体および胎児への危険性は妊娠全期間を通じてきわめて低いと説明し、
ワクチン接種を希望する妊婦には接種する(推奨グレードB:勧められる)」
と記載されています。

このように、妊娠週数が何週かを問わず、インフルエンザワクチン接種は可能で、勧められるとされています。
 
★肺炎などの重篤な合併症が生じやすい

妊婦がインフルエンザに罹ると、胎児への影響も心配されますし、肺炎などの重篤な合併症が生じやすいこともあり、アメリカなどでは妊婦へのインフルエンザワクチン接種を積極的にすすめています。

 
★薬をやたらにのめない

また、妊婦がインフルエンザに罹患すると、胎児への影響を考えて、やたらと薬をのむことができないということもあります。高熱などの症状が出てつらいのに、薬はのまないでひたすら寝てがまんするというのも非常に過酷です。(タミフルは妊婦がのんでも問題ないという報告もあるようですが)

このような事態を避けるためにもインフルエンザを「予防」するのは重要です。

 
★上の子供からうつることも

妊婦が初めての妊娠で、外に仕事に行っていないようでしたら、手洗い、うがい、人混みを避けるなどの注意でインフルエンザの感染を防げるかもしれませんが、二人目以降の妊娠の場合には幼稚園・保育園に行っている上の子供からうつるということも考えられます。もちろん夫からうつされる可能性もあります。

以上のことから、妊婦は積極的にインフルエンザ予防接種を受けた方がよいと思われます。

 
★インフルエンザワクチンの添付文書

なお、インフルエンザワクチンの添付文書では次の注意書きがあります。日本国内ではまだ妊婦への予防接種の調査成績が十分蓄積されていないためと思われます。

妊婦、産婦、授乳婦等への接種

妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。
なお、小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くならないとする報告がある。」

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★授乳している女性も同様

授乳している母親についても同様です。母乳に成分が出るというようなこともなく、インフルエンザワクチンの接種が可能です。

インフルエンザ 予防接種 妊婦はいつから可能?

前章では、「妊娠週数が何週かを問わず、インフルエンザワクチン接種は可能」と書きました。原則的には妊娠中いつでも可能です。

ただし、「インフルエンザワクチンの接種とは関係なく、一般的に妊娠初期は自然流産が起こりやすい時期であり、この時期の予防接種は避けた方がよい」という考え方もあります。
産婦人科医師によって「妊娠何週でもOK。接種を勧める」というところもあれば、「接種は妊娠12週以降」などと決められているクリニックもあります。

なお、インフルエンザの流行期間は通常12月から3月位です。ワクチン接種後の効果が発現するまで2~3週間必要ですので、10月~11月の時期での接種が望ましいです。

いつインフルエンザの予防接種を受けた方がよいのかは、かかりつけの医師ともご相談なさってくださいね。

インフルエンザ 予防接種 妊婦が受けるときの防腐剤(チメロサール)について

インフルエンザの多くのワクチンにはチメロサールという防腐剤が入っています。一ビンのワクチンを複数回使用するための防腐剤です。

チメロサールはエチル水銀化合物です。以前米国で水銀中毒と自閉症の症状が類似しているため、自閉症の増加をワクチンによる水銀暴露と関連づけた報告がありました。しかし、世界保健機構(WHO)は「エチル水銀は半減期が短く暴露は比較的短時間であること、さらに体内に蓄積されるメチル水銀と違いエチル水銀は腸管から盛んに排泄されるため、ワクチン中のチメロサールにさらされた小児、成人における毒性を示す根拠はない。」という見解を示しました。

インフルエンザワクチン中のチメロサールは、1mL当たり、0.008mgなどごくごく微量です。またエチル水銀はメチル水銀と異なり迅速に排出されます。

また、チメロサールによる副作用は、局所の発赤や腫脹などの皮膚過敏症がみられるだけで、重篤な副作用や長期的な健康被害は起こっていません。ですから妊娠女性にワクチンを接種した場合にも安全性に問題はないと報告されています。

それでもより高い安全性を求めて、日本でもチメロサールをワクチンにできるだけ添加しない方向に進んでいます。

現在チメロサールを含まないインフルエンザワクチンが複数製品あります。複数回使用のビンではなく、1回限り使用のシリンジタイプのものです。チメロサールなしのインフルエンザワクチンを希望される妊婦の方は、かかりつけの産婦人科医院・クリニックにチメロサールを含まないワクチンがあるかどうか、お問合せくださいね。

なお、チメロサールを含まないインフルエンザワクチンの接種代金は、チメロサールを含むものよりも少し高いのが普通です。

まとめ

妊婦さんはそうでない人以上にインフルエンザの予防が大切です。インフルエンザの予防接種を受けても大丈夫で、むしろ積極的に接種を勧めている産婦人科医もいます。

妊娠週にかかわらずワクチン接種はできますが、接種に際しては、妊娠週やインフルエンザ流行の時期などを勘案し、接種のタイミング等をかかりつけ医ともご相談なさってください。

インフルエンザをしっかり予防して、どうぞ健康的で楽しい妊娠生活をおおくりくださいね。

 
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